アースは、感電防止と、ノイズ低減用などのEMI対策ではやり方も意味も違う

アースについて話をするとき、オーディオマニアと電気工事関係者の話ややり方が食い違う原因として、保安用にするかEMI対策にするかの違いがあります。同じアースで両方の効果を生むときもありますが、効果は全く別になります。

保安用の説明はネットに山ほどありますのでごく簡単にしますが、アースに接続している金属筐体の機器で絶縁不良が起きたときの保護や、漏電ブレーカーがある状態で、機器で絶縁不良が発生したときに速やかに電源を遮断する手助けをする役割があります。

保安用ではアース線自体の周波数特性やノイズ遮断性能などは求められていません。求められるのは接地抵抗の値です。

反対にEMI対策では、接地抵抗はあまり関係ありません。どちらかというと電磁シールド性能ですので、機器内で電位を合わせてることでシールドになるかどうかです。1点アースやループができないようにするというアースの常識もありますが、シールド性能と大地との接地抵抗値はあまり関係なく、いわゆる「仮想アース」と呼ばれるものでも効果が出ることも、それを証明しています。

EMI対策でアースを接続したときに、余計にノイズが増えてしまったということもあります。アース線自体に「アンテナ作用」が発生することもあるからです。コンセントにある保安用アースはシールドなしの単線を家じゅうに張り巡らしており、距離も長く、そのうえ、大地との接地抵抗は下げられても0Ωにはなりませんし、そもそも大地は電線のように電気は通しません。そんなわけですから、EMI対策のアースは別に考えるべきだと思うわけです。

EMI対策におけるアースの取り方は非常に奥が深いものと言えます。古くから言われている「ループしない」「1点アース」は基本として、アースの取り回しだけでなく部品や機器配置なども影響します。ケーブルの長さももちろんです。長さは基本的には短いほうが良いですが、周波数が高くなってくると波長と共振周波数も関係してくるので、単純に短くすればいいとは言えなくなってきます。

それでもオーディオなどEMI対策のための仮想アースだけでは保安アースのかわりにはなりません。オーディオ用にコンセントをアース付きを指定していながらアースが配線されないよう指定する例がありますが、コンセントにあるアースは保安用でで、保安用と思って接続したら実際は配線がされていないということになり、絶対にやってはいけないことです。

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