アルカリ乾電池の1.5Vとニッケル水素電池の1.2V、電力を大きく取り出せるのはどっち?

あるところに充電式乾電池の広告があり、出力が1.5Vだから、一般的なニッケル水素電池の1.2Vよりも高出力のような記載がありました。しかし、出力を電力とすれば完全な間違いです。

なぜなら、アルカリ乾電池やマンガン乾電池はニッケル水素電池に比べて内部抵抗が大きいです。ですので、大電流を取り出したときの電圧降下が大きく、結果的に電圧も電流も取り出せないことになります。

ニッケル水素電池はアルカリやマンガンに比べて内部抵抗が低いので、定格は1.2Vながら電圧降下を起こさずに大電流が取り出せます。つまり大きな電力が取り出せます。今ではあまり見なくなったニッカド電池も同様の傾向です。

ミニ四駆で遊んだことのある人ならわかりますが、ニッケル水素電池やニッカド電池を使うとガツンとした加速をすることを体感していると思います。新品アルカリ電池ならかなり加速もいいですが、電池が少し弱ったり、トルクも求められる高速ギアにするとニッケル水素電池にはかないません。

そして、ノーマルのモーターはアルカリやマンガン乾電池でも使えるようになっているため、高出力ではありません。どういうことかというと、巻線の抵抗が大きくあまり電流が流れないようになっています。

ところが、ハイパーダッシュモーターなど、オプションのモーターを使うと早くなるのは電流がもっと流れるような巻線になっているから。それはつまり抵抗分が少ないということです。大電流を流すとアルカリ乾電池では電池の内部抵抗分が大きく、ハイパーダッシュモーターでは電圧降下が大きくなります。ハイパーダッシュモーターにニッケル水素電池を使うと、モーターの欲する電流に対しても電圧降下を起こさずに供給できるため、最初からガツっという加速ができるのです。

つまり、電池の電圧が低いからといって低出力なわけではありません。むしろ内部抵抗が低いぶん、大きな負荷がかかっても電圧降下を起こさないため、安定して電力を供給できることになります。

乾電池の1.5Vが必要で、ニッケル水素電池の1.2Vでは低いというケースは、たとえば、電流を要求しないような機器で、1.5Vという電圧が必要な場合だけです。本来、乾電池の電圧は内部抵抗があるため安定しない前提で機器を設計する必要があります。そのため、1.2Vはだめで1.5Vなら動作するという機器は少ないはずで、もし、そんな機器があれば設計が甘いとしか言いようがありません。

反対にニッケル水素電池の使用禁止と書いてあるものもあります。それは大きな電力が取り出せてしまうため、発熱などの問題があるためです。電子回路が備わったものでは大丈夫ですが、単純にモーターを回すだけの玩具などではそう書いてあることがあります。

たとえば一部のミニ四駆のノーマルモーターがそうです。想定以上に電流が流れてしまい、発熱などの問題が起こる可能性があるということのようです。特にトラブル時にモーターの回転が外部で押さえつけて止められた場合、アルカリ乾電池のように電池の内部抵抗が多ければモーターにかかる電圧は低くなってモーターが焼けることはまずありませんが、ニッケル水素電池で同様のことをすると、電圧降下が少なく大電流を供給し続けるためモーター内部の巻線が焼けてしまう可能性があります。

ちなみに、ミニ四駆の場合はモーターの交換でニッケル水素電池を使わないといけない場合があるので、シャーシの電池ボックスに細工がしてありませんが、安全のためニッケル水素電池が使えないように細工がしてある玩具もあります。その細工とは+極の凸部の出っ張りがニッケル水素電池は小さいため、凸部を受ける形状次第で、ニッケル水素電池では電極が接触しないようにできるからです。

さて、1.5V出力の充電池ですが、リチウムイオン充電池を使い、出力を1.5Vに調整してあるものがふつうのようです。

一部の商品を確認したところ、+極の出っ張りも乾電池並みのように見えます。それでも、アルカリ乾電池よりも大きな電流が取り出せそうなので、機器によっては注意が必要かもしれません。

そして、1.5V出力の充電池の出力電流ですが、電圧降下回路を通るため比較的限界値は低いはずです。一般論ですが、負荷変動の大きな機器、たとえばモーターやアンプなどではすぐに保護回路が働いてしまって使い物にならない可能性もありますので、十分注意したほうがいいでしょう。

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