欧州でハイブリッド車が増えているという話について
まず、BEVはアーリーアダプターの需要が一巡していること。新しいものの普及の途中経過としては一般的なことだと思います。そのうえでHEVが増えているのは、当初、EUがクルマの電動化を叫んでいて、当初のロードマップどおりになっただけ、と考えることもできます。
当時、EUが言っていた電動化とはHEVも含めた電気がパワートレインに入ってくることを意味しており、どの完成車メーカーもいったんはHEVにする準備を進めていました。少し前は盛んに言われていた「48Vハイブリッド」のマイルドハイブリッドがまさに今、普及している段階のため、数字的にはHEVの台数が伸びてしまったと考えるほうが自然です。
実際にクルマのラインナップを見てみても、簡易なハイブリッド車のラインナップが増えていることから、クルマを買えば自然にHEVの数字が増えてくるというものです。国内に入ってくる欧州車を見ても、気づけばフォルクスワーゲン・ゴルフの通常仕様だとガソリン車はすべてハイブリッドになってしまっています。ハイブリッドでないガソリン車は売ってないのです。これは本国でも同様で、一応は非ハイブリッドもあるようですが、もう非ハイブリッドはメインではないのです。
売っているクルマの選択肢がこのような状況で、欧州でHEVが売れて再評価だとか、どこぞの会社が正しかったなどと言い切ってしまうのはどうなんでしょうか。
実際、HEVといっても、トヨタの複雑怪奇なTHSのようなものまで無理する必要はなく、減速時のエネルギー回収や、加速時のアシスト、さらにISGによるアイドリングストップによってかなりの低燃費を実現することができます。
それは、2009年ごろに3代目プリウスと2代目インサイトが燃費競争をしていたころから変わらず、THSのようなハイブリッドとマイルドハイブリッドの燃費の差もそれほど大きなものではなく、効果とコスト、クルマとしてのキャラクターの維持を考えた場合、多く普及するにはマイルドハイブリッドになるのは自然の成り行きです。
そして、HEVについても気になることがあります。国内の場合、THSが幅をきかせてしまったため、現在ではマイルドハイブリッドのクルマがほとんど存在しないことです。コスト的にフルハイブリッドを同じくらいまで安くできるのならそれでもいいですがそうはいきません。
高級車がBEVに行ってしまったあと、普及価格帯やエンジン音や雰囲気を楽しみたいクルマはマイルドハイブリッドとなったとき、国内メーカーの世界での居場所はあるんでしょうか。
48Vマイルドハイブリッドは実装しようと思えばTHSほど難しくなく実現できるのは分かっていますが、日本人としてはけっこう心配なところです。日本はHEV推しだから世界の主流と思っていたら、いつのまにかHEVのトレンドすら外しているという状況になりかねません。