商品名の「DCモーター」とは直流モーターにあらず、誤解しないように

初期のころから「DCモーター」という言葉をマーケティング用語として使い、扇風機の広告でDCモーターを採用すると、あたかも省電力であるということを訴求していたメーカーが再び注目され、ちょうど扇風機の季節にさしかかるころでもあるため「DCモーター」について記したいと思います。

扇風機の世界では、DCモーター=省電力、という認識が一部で広がっています。

しかし、モーターの歴史を少し知る身からすれば、DC=直流、のモーターというのは電磁石の力を回転運動に変換するため、回転に合わせて極性を変更し、そのためにコイルに電気を供給するブラシがあり、メンテナンスの面でも、効率の面でも、耐久性の面も、騒音の面からも良くないとされてきました。しかし、構造が簡単なうえに電圧で回転数制御ができることで、小さいものではホビーのモーター、大きいものでは昔の鉄道車両に使われきました。

一方で一定回転で済むような「動力」と呼ばれるところ、例えば一定回転で回るポンプやコンプレッサーの動力源などは効率、メンテナンス性能に優れる三相交流のAC=交流モーターが昔から使われてきています。

しかし、時代は変わって、ブラシレス直流モーターなるものが出てきます。これは、ブラシで極性を変換するところをセンサーと電子回路に置き換えるもので、モーターの回転部分そのものは交流モーターです。入力電圧によって交流の周期を変える電子回路を一体化することで、あたかも直流モーターのように使え、しかし、メンテナンスや耐久性はメカニズムが同じ交流モーターと同等となります。

つまり、扇風機の「DCモーター」とは、一般的にこのブラシレス直流モーターのことを指しています。

とはいえ、一体の機器として考えた場合、電圧制御をするのではなく、交流を生成する時点で周波数で回転数制御したほうが効率的のはずです。鉄道車両も電気自動車もハイブリッドカーの電気モーターもそうなっています。しかし、DCモーターと言うくらいですから、汎用のブラシレスDCモーターと、以前からある扇風機の制御回路でモーターユニットにかける電圧の大小で回転制御をするほうが設計が楽なのかもしれません。

一方、従来ながらの扇風機の場合、あまり効率のよくない交流モーターを使っていて、抵抗器を介して交流の電圧の大小で回転数を変化させているため本体ボタンで風量を下げても消費電力はほとんど下がりません。その対比として「DCモーター」なのではないかと思われます。

DCモーターは単なる商品名というか商標のようなものなので、あまり目くじらを立てるつもりもないですが、昔から交流モーターのほうが効率が良くメリットが多く、そのために直流から交流を生成するための半導体や仕組みが研究され、やっと究極のものに近づいてきたことに対して、誤解をされるのではと心配になります。

ちなみに、省電力を究極まで追求しているモーターの使いみちとして、電気自動車の走行用モーターがあります。これは永久磁石同期電動機です。同期電動機ということはACモーターです。ハイブリッドカーを含めてごく一部の例外を除いて同期電動機です。

広告でさまざまな名称を使うのはしょうがないことですが、一般名称と勘違いしてしまうような用語には本当に気をつけたいところです。

 

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