エアコン工事に電気工事士は不要、電気工事士と電気工事業は違います。

エアコン工事について、最近では、業者以外が工事することについて、難色を示しているひとたちが多くなっているように感じます。経済産業省の説明も、以前なら電気工事士免許との関係を分かりやすく書いていたのを目にしたのに、最近公開された文書では、エアコン工事は電気工事業が必要という説明をよく目にします。

ただし、最初に言っておきたいのは、法令や法令の解釈は変わってはいません。最近よく見る経済産業省の説明も、エアコン工事そのものについての工事士免許の有無の説明ではなく、業者として請け負う際に必要な許認可についての説明が前面に出てきたということです。

エアコン工事を取り巻く状況を整理

最初に3つの前提を整理しておきます。電気工事士と電気工事業の違い、そして、エアコン工事についての電気工事です。これを確認しておかないとけません。

(1)電気工事士と電気工事業の違い

電気工事 → 個人が試験を受けて合格して取得する「免許」のこと

電気工事 → 都道府県に登録や届け出た「事業者」。主任電気工事士として第一種電気工事士か、実務経験のある第二種電気工事士がいることが必要

(2)電気工事士がしなければならないこと

電気工事士がしなければならないのは法令で定められた「電気工事士が行うべき電気工事」。法令で定められた「軽微な作業」は免許不要

(3)エアコン工事における「電気工事」とは

・一般的なルームエアコン工事では、電気をなにかいじることは、室内機と室外機をケーブルでつなぐところだけ。
・600V以下の室内機と室外機の接続は、電気工事でも「軽微な作業」
・室外機と室内機を接続するケーブルを冷媒管などと化粧テープやビニルテープを巻きつけて一体化して壁などに固定する作業は「軽微な作業」
・壁にある金属製以外の防護装置(スリーブ)のなかに電線を通す作業は「軽微な作業」
・作業後の電線の損傷状況が容易に確認できる場合におけるケーブルを冷媒管などと化粧テープやビニルテープを巻きつけて一体化したものを壁の防護装置を通す作業は「軽微な作業」

こうしたことから、個人が自分のエアコン工事をすることは、電気工事士免許は不要ということになります。コンセント増設・変更やアース打ち込みは、また別の問題です。

あえて言うなら隠ぺい配管の場合、電線の状態が容易に確認できないとか、一体化していないなどで「電気工事士が行うべき電気工事」に該当する可能性が少しある程度です。

どうしても「電気工事士が行うべき電気工事」にしたいのなら、冷媒管とは別にして室内機と室外機の間のケーブルを壁に固定するような工事をしなければなりません。ふつうはこんな意味のないことは絶対にしません。

 

 

経済産業省の説明は業者向けの説明

ところが最近、経済産業省のあるページのある図をもとに、電気工事士免許が必要と言う人が出てきました。しかし、よくみると、これは「電気工事業」の説明です。

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/koji_2.html

ここで、「士」と「業」を間違えていると思われます。

エアコン工事を請け負う際には、「軽微な作業」でも電気工事業の登録や届け出が必要です。ということを説明したに過ぎず、個人が「軽微な作業」をするのに電気工事士免許が必要とはなっていません。実際の工事でも、現場で「軽微な作業」をする際の作業担当者に電気工事士免許は要求していません。

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/20210430-1.pdf

さらにこの図では「電気工事業法の対象となる主な作業について」としており「業」のために「軽微な作業」も含まれているため、この図の作業が電気工事士免許が必要と誤解する人は多いと思われます。
(非常に細かいことですがこの図の化粧テープ巻きの上下が逆です。上から巻いたら水が入ってしまいます)

エアコン工事は、電気工事士免許よりも大事なことがたくさんある

なぜ、いまだにエアコン工事と電気工事士免許ということだけこだわる人がいるのかが不思議ですが、エアコン工事にはもっと大事なことはたくさんあります。電気の工事っぽいことは室外機と室内機の結線だけで、冷媒管の接続と真空引き、壁への取付など、もっと技術が必要なことはたくさんあります。

これらについては、免許等は不要ですが、きちんとした技術がないと事故に直結します。もちろん電線の結線は大事ですが、新品の電線を継ぎ目なく接続していれば、事故になることはまずありません。

ところが、壁への取付が不十分なら落ちてきて人間のけがにつながります。室外機を高いところに取り付けている場合は、不十分な工事は本当に危険です。

また、一部で警告しているように冷媒の破裂の可能性もあります。もっとも、これはかなり条件が揃わないと爆発はしないようです。そして、冷媒管の接続が不十分なことにより冷媒漏れにより環境破壊もあります。冷媒管は定尺で加工されているものを買えばフレア加工は必要ありませんが、自分でフレア加工をするような場合には、道具や技術の差がかなり出てくるところです。

そしてそもそもですが、電気工事士の免許があったとしても結線がうまくできるかは別問題です。技術の差はかなりあります。運転免許を持っていながら交通事故を起こす人がいるということからも理解していただけると思います。

なぜ、エアコン工事のごく一部についてしか関係のない「電気工事士」だけにこだわるのか、本当に不思議です。

 

 

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