首里城の延長コード問題で言われてることですが、漏電もブレーカーも関係ない
いつのまにか首里城の犯人は延長コードが原因のようになってます。そこで、ブレーカーが切ってないとか漏電ブレーカーがないとか的はずれな指摘があるので解説しておきます。
漏電ブレーカーがないから被害が広がった?
漏電ブレーカーは関係ありません。漏電ブレーカーは文字のとおり電気が漏れたときに遮断するものです。「漏れる」の意味ですが、たとえばプラスが電線を通って供給され、マイナスの一部が地面を通って戻ってくるようなことです。これが「漏電」です。
本来電気が流れないはずなのに少し電気が流れているのは漏電ではありません。それが故障なのか、単なる機器の待機電力なのかは電力供給側からは区別が付きませんし、それをなんとかするのはコンセントや延長コードではなく、機器側が対応する問題です。
ちなみに漏電ブレーカーの動作は、プラスとマイナス、交流なのでNとLとでも言ったほうがいいかもしれませんが、行きと帰りの電流に差があると漏電とみなして落とします。
ブレーカー切ってないのが問題?
これは本当に声を大にして言いたいのですが、ブレーカーは日常のスイッチではありません。そういうように設計されていませんし、劣化が早く進めばブレーカーの機能に支障が出て、安全を守ることができなくなります。電源を遮断する必要があればそのためのスイッチを別に付けることが正しい対応となります。
小さいお店などで閉店時にブレーカーを落として帰るような運用をしているところがありますが、できれば別の方法を考えたほうがいいでしょう。首里城の場合は通路が薄暗く怪我をする恐れがあり、LED照明を延長コードを使って接続して設置したということですが、仮設でなくきちんとした照明を取り付けてきちんとした配線を作ったほうがいいでしょう。
首里城のような大規模施設でなく、小さいお店で安全優先の対策をしたいというのであれば、コンセント全体を切るスイッチを付けるか、コンセントを抜いて帰るということをするしかありません。
延長コードがショート、過電流でうんぬん
電力供給側から見れば、定格内で電力が消費されているうちは末端で何が起ころうと知らない話です。たとえば100Vで5Wが消費されたとしても、それが正常な機械の消費か、異常が起きて火を起こしている消費かはわかりません。仮に過電流防止機能があるとうたう延長コードを使ったとしても、発火点の消費が定格電力内ならば電源を遮断する理由がありません。
ですから、仮に、延長コードの異常で発火していたのであれば、人間がきちんと管理する以外に対策はありません。しかも、ちゃんとしたショートならばブレーカーの機能で即遮断します。火が出るのはショートというよりも、電線の一部がわずかに接触して電気抵抗を持ち、そこが発熱して発火に至ることが多いと思われます。これが定格電力内で起こっていれば、ブレーカーも何も遮断することができません。火が出るほどだからさも大電力かと思われがちですが、数Wと少ない電力で発火させることができますし、それを制限してたら何も電気製品が使えません。正常動作で1500Wを使ってしまうホットプレートや暖房機器はいくらでもあるからです。
結局のところ、人間がきちんとコードの状態を確認するしかないということになります。
では、どうしたらいいか
報道されているものを見た限りでは、延長コードを床に直置きし、そこを多数の人間が歩いてコードが損傷しやすい環境であったことが想像でき、断線や部分的接触で抵抗分をもち、そこから発熱、発火したと考えるのが妥当ではないでしょうか。
これは延長コードを使うときすべてに言えることです。常に点検をし、異常な折れ曲がりや変形、発熱などは常に注意し、劣化があれば即交換です。また、粗悪品は使わないことです。粗悪品が何かは難しいですが、物理的構造が弱かったり、辻褄の合わないような機能が付いた製品はまず避けるのがよいでしょう。
ちなみにだいぶ前に延長コードの安全基準が厳しくなり、二重被覆でない延長コードは売ってはいけないことになっています。昔買ったものを使うことに法的に制限はありませんが、安全のために二重被覆でないコードを使った延長コードは使わないことを強くおすすめしておきます。
そして、そもそもの話ですが、延長コードを常用するような使い方の場合は、そこにコンセントを増設することを考えたほうがいいでしょう。コンセントを増設するということは、途中のケーブルも保護された状態にしなくてはなりませんし、コンセントの強度や確実性も高まります。場合によってはブレーカーを別系統することも検討したほうがよさそうです。
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